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【第2の話題】心肺蘇生教育は単なる「教えたつもり」では、救われる命を増やすことはできない。

最終更新: 2019年5月22日


 

毎年、何百万人もの一般市民と医療関係者が蘇生教育を受けています。この一部の方々は繰り返して、例えば2年毎にそのような教育・訓練を受けています。これほどまでに教育・訓練がなされても、蘇生率の向上は捗々しくありません。何故でしょうか?その要因の一つに、教育訓練の方法があると、2018年アメリカ心臓協会は医学雑誌に示しました。

私達は、体験したことのある教育方法に疑問を挟むことは多少あったとしても、これまで行われてきた心肺蘇生教育に重大な問題があったとは、あまり考えてなかったのではないでしょうか?一般的に心肺蘇生教育は、学校の教室で学ぶような環境でインストラクターが指導しながら、胸骨圧迫用の人形や動画教材などを用いて行われます。このような方法の背景には、私達が幼少から慣れ親しんだ「教室で教えられる」学び方を真似した教育方法は、有効であろうという期待感があります。改めて、考えてみましょう、「この「教室で教えられる」学び方は効果が高いのでしょうか?」と。

『省察的実践者の教育』でドナルド・A・ショーンは教育を受けて現場に赴任した専門職に適切な能力や知恵を欠いていることが多くの領域で示されており、「専門職教育への信頼の危機」と表現しています[ドナルド・A・ショーン著、柳沢昌一・村田晶子訳、省察的実践者の教育、鳳書房、2017年]。 これまでの教育は、学習者現場での実践を確実にするほど必ずしも効果的ではないことが示唆されています。

もっと歴史をさかのぼり、人は数百万年の歴史のなかで教室やテキストのような教育の仕組みがなくても学びながら様々な問題を解消してきたことが推察されます。人工知能研究者ロジャー・シャンクは「洞窟時代の人々は教室も本も持ってなかった」として、「学習に会話が重要」と、人の古来からの学習方法に言及しています。 従来の教育方法では、教育を受けた人々が現場ですぐに活躍することは難しいことが判明し、現場での実践を保証する教育例として軍での教育が注目され、工学の原理も応用され、1950年頃からインストラクショナル・デザインが発展しました。 学校の教室で私達が慣れ親しんだ教育では、教師が学生に何かを教えたのかもしれませんが、その学生が現場で実践が向上する、あるいは現場で自ら学び続けることができる程には発達していない可能性が高いと、私は考えています。そのような教育に慣らされている私達は、これまで、心肺蘇生教育も同じように、教室のような場所で、教師役のインストラクターがコース参加者に知識や技術を教えたのかもしれない状況に違和感を感じないままだったのです。しかし、最近になってようやく、その仕組を変えなければ、心肺停止から救われる人は増えない懸念が強くなってきたのです。

正に私達が求められているのは、このような「教えたつもり」の心肺蘇生教育を、心肺停止の起こる現場で、心肺蘇生術を学んだ人々が適切に行動して、一人でも多くの人々が救われる仕組みを創ることです。それは夢物語ではなく、現在既に用いられているインストラクショナル・デザインを応用すれば可能になる可能性は高いのです。 これまでの教育で慣らされた考え方・行動を少し変えて、より多くの人々が救われる社会を創りましょう。